路上生活者は日々寒さに耐え、世間の目にさらされ、道ゆく人に軽蔑され、心無い言葉をかけられています。 あの人たちは怠け者だ。あの生活が気に入っているんだ・・・など。誤解と偏見。そして無視。
だれが好んで路上生活者になるでしょうか?
路上生活者とはどんな人たちでしょうか?
1990年代初頭のバブル崩壊に伴い、寄せ場に集まり飯場などの劣悪な雇用契約で働いていた日雇い労務者たちが職を失い、一気に路上に溢れ新宿駅などのターミナル駅の地下に所謂ダンボールハウスを作り身を寄せる様になりました。彼らは決して怠け者ではなく、高度成長期の私たちの国のインフラ整備に汗を流した人たちなのです。その後、金融危機に伴いさまざまな人たちが路上に溢れました。老若男女問わず多くの人が経済的破綻、家族の絆や人間関係の断絶、暴力や精神的病などの理由で居場所を失い駅周辺に身を寄せる様になりました。この間、日雇労務者だけでなく、経緯や経歴は本当に様々となりました。それを一言では言い表すことはできません。路上生活者は今日に至るまで絶えることがありません。
ホームレスの本質は?
このホームレスの問題は単に経済だけに起因するのではありません。家庭の問題やコミュニティの問題でもあり、日本社会を映し出す鏡であると言えます。誰でも経済が破綻し人間関係が崩壊してしまうと誰でもホームレスになりえます。
ホームレスとは、建物としての家(Haus)を失ったということではなく、ホーム(Home)を失ったと言うことです。つまりホームとは居場所、大切な人と共に居れるところ、心の通える憩いの場所です。それを失ったということです。
本来ホームであるはずの家庭がそうでなくなる。我が街と言えるコニュニティがそうでなくなる。この意味からすると住む家があっても家族があってもホームレスと同じではないでしょうか。ついに居場所を失って路上生活となるのです。これがホームレスの本質です。ゆえにホームレスという言葉と路上生活者という言葉とイコールとしないで使い分けています。
生きる権利と幸福を求める権利
日本国憲法の第25条に次のように明記されています。
第1項 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
第2項 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の
向上 及び増進に努めなければならない。
路上生活者には自己の生存を守るための権利が当然あります。また幸福を求めることも当然の権利です。ところが一度ホームレスになってしまうと住所を失うことになり、住民票を失います。この事は自力で社会復帰することを困難にしている重要な要因のです。
行政の支援にも限界があります。ここに彼らに差し伸べる人々の手が必要不可欠なのです。